2010年度夏学期 量子力学II (大学院講義 量子力学GIと両面開き) 

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/kato-yusuke-lab/Members(加藤雄介)→講義

クラス: 基礎科学科3年生 相関基礎科学系大学院生

担当教員: 加藤雄介(居室:駒場第1キャンパス16号館3階301B号室)

更新情報: 08月05日 レポート課題 筆記試験の結果に自信がない人は、 試験問題をすべて解答したレポート答案を8月20日までに 16号館2階203A 國見昌哉氏(Teaching Assistant) まで提出すること。

講義日時・場所

16号館1階109号室、金曜日4限(14:40から16:10まで)
第1回 04/09 第08回 06/11
第2回 04/16 第09回 06/18
第3回 04/23 第10回 06/25
第4回 05/07 第11回 07/02
第5回 05/14 第12回 07/09
第6回 05/21 第13回 07/14(水)
第7回 05/28

注:講義の進度により演習と日程を入れ替えることもあります。

休講・補講の連絡
  なし

講義内容:

量子力学Iでは量子力学の基本的な考え方と枠組みを学んだ。量子力学がミクロな世界の物理法則を記述するのなら、ミクロな物質の性質を理解し、どのような状況で量子効果が顕著になり、どのようにして量子効果を応用することができるかを知るためには、具体的な量子系へのアプローチを学ぶことが不可欠である。量子力学IIではとくに一粒子量子系を解析的、代数的に捌き、その物理的特性を理解する具体的な手法について学ぶ。

成績評価:

期末試験とレポート課題の結果に基づいて評価する。

レポート課題:

グラフィックソフトを用いてグラフを書く課題を出しますので、mathematica, gnuplotなどのソフトウエアの使い方を学んでおいてください. 

講義内容目次 

  • 量子力学Iの復習
    • 量子系の状態の記述 状態と物理量の観測値の関係、状態の時間発展、エネルギー固有状態、 正準量子化
  • 1次元調和振動子
    • 無次元化、昇降演算子、エネルギー準位、エルミート多項式、エネルギー固有状態(、古典極限)    
  • 対称性と保存量
      • ダイナミックスの中にある「変わらないもの」保存量、並進演算子、並進対称性と運動量、回転演算子、回転対称性と角運動量(、時間並進対称性とエネルギー)
  • 角運動量

    • 非可換な部分代数の扱い方。一般的な角運動量、角運動量の量子化     
  • 中心力場   

    • 変数分離法、球面調和関数、ルジャンドル陪関数
  • 水素原子

    • 合流型超幾何関数、エネルギー準位とその縮退
  • スピン スピン1/2, スピン軌道相互作用, 合成角運動量

  • 時間に依存しない摂動論I(縮退がない場合)
    • 一次摂動、二次摂動、例:一次元調和振動子に対する摂動
  • 時間に依存しない摂動論II(縮退がある場合)
    • 永年方程式, 例:スピン・軌道相互作用による縮退準位の分裂
  • 時間に依存する摂動論
    • 断熱定理、フェルミの黄金律、ラビ振動(2準位系の厳密な動力学と摂動論の比較)

関連講義

量子力学I、量子力学演習I 、物理数学 (以上基礎科学科4学期)
量子力学演習II (基礎科学科5学期), 
量子力学III (基礎科学科6学期), 
量子力学特論 (基礎科学科7学期),
 

参考書

教科書は指定しない。 参考書は以下のとおり。

新版 量子論の基礎  清水 明  サイエンス社 2003
本講義を受講する前にもう一度読んでおくべき本。また学習がある程度進んでから、量子論の基礎をもう一度確認するために読み返すべき本。しかし本講義の内容をカバーしているわけではない。

量子力学I,II 猪木慶治、川合 光、講談社
具体例が多く、講義を聞きながら読むのに適した標準的教科書。 演習問題を解く技術も身に付けることができる。本講義で扱う範囲はすべて記述されている。東大理学部物理学科学部2年生から3年生向けの講義レベル。

量子力学I,II,III 小出昭一郎、裳華房
具体例が多く、講義を聞きながら読むのに適した標準的教科書。 演習問題を解く技術も身に付けることができる。本講義で扱う範囲はすべて記述されている。(2)より年代は古く、やや易しい。

量子力学 ディラック 岩波書店
格調高い古典的名著。時間をかけてじっくり読むのに適している。講義でわからないところを調べるといったハンドブック的な使い方には向かない。理論物理を専攻するつもりなら手元に置いておくべき本。 出版年が古いため、(1)とは異なりベルの不等式については触れられていない。

現代の量子力学 上下 J. J. サクライ 吉岡書店
物理を専攻するつもりなら手元に置いておくべき本(これ一冊でもいいかもしれない)。本講義の範囲をカバーしている。ディラックよりはるかに読みやすい。

量子力学I,II 朝永振一郎、みすず書房
「歴史仕立て」形式の格調高い本。公理論的な構成よりも科学史追体験型の構成を好む人向きである。

Quantum Physics Stephen Gasiorowicz  John Wiley & Sons 1996
標準的教科書。アメリカで用いられる標準レベルの教科書は、教育的配慮が十分になされていると思う。

The Feynman LECTURES ON PHYSICS Vol. III  Feynman, Leighton, Sands  Addison Wesley
独創的な講義録。物理志望なら全巻I-IIIを手元に置いておくべき。こういう本をじっくり読みこむのなら学部4年間の過ごし方としては十分意義がある。

演習 量子力学(岡崎 誠、藤原毅夫、サイエンス社)
典型的、標準的な問題をコンパクトにまとめてある演習書